フォークの神様「ボブ・ディラン」とカバーでも光るその骨太メロディー

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このコラムでは、偉大な作曲家を取り上げて、音楽に対する考え方や取り組み方、作曲手法や時代との関わりなどを、たのしく紹介していきます。

今回は、フォークの神様「ボブ・ディラン」と、そのカバー曲という観点でお話ししたいと思います。

追記:2016年 ボブ・ディラン ノーベル文学賞 受賞! おめでとうございます!

 作詞家、作曲家、シンガーソングライターを志す皆さん! プロデューサーを志す皆さん! そして、音楽を愛する皆さん!

骨太なメロディーはお好きですか?

WooM(ウーム)!!!!!

 

 

ボブ・ディランとは

ボブ・ディラン(英語: Bob Dylan、1941年5月24日 – )は、アメリカのミュージシャン。21歳でレコードデビュー。

翌年、ピーター・ポール&マリーがカバーした「風に吹かれて」が、ビルボード誌のチャートで2位を記録しました。

その頃から、フォークの貴公子と呼ばれるようになり、積極的に政治色の強いプロテストソングメッセージソングを発表しました。

この頃からディランの楽曲をカバーするアーティストが大変に多く、しかも、カバーされた楽曲はそれぞれヒットし、あるいは、そのアーティストの代表作になったりするのでした。

ボブ・ディランの作品と言えば、

  • 風に吹かれて
  • 時代は変る
  • ミスター・タンブリン・マン
  • ライク・ア・ローリング・ストーン
  • 見張塔からずっと
  • 天国への扉

など、オリジナルもさることながらカバーの魅力が光る傑作があるのです。

ビートルズのジョン・レノンは、一時期、ディランに心酔して、ディランと同じ帽子をかぶったり、歌詞やメロディーにおいてもディランから多大な影響を受けました。

・左:ボブ・ディラン 右:ジョン・レノン

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もし、ジョンがディランに出会っていなかったら、ビートルズの歌詞の世界も随分変わっていたかもしれません。

ジョン・レノンですら、こうですから、いろいろなアーティストがディランの影響を受けたのも理解できますね。

 

ボブ・ディランの代名詞「風に吹かれて」

ボブ・ディランの出世作であり、代名詞とも言っていい名作が、この「風に吹かれて」(2ndアルバム収録)です。

しかし、同曲を世に広めたのは、ピーター・ポール&マリー(PPM)によるカバーでした。

これほどまでに楽曲の印象が変わるのかと言うくらいアレンジされた「風に吹かれて」は、1963年にビルボード誌 HOT100で2位まで上がり、世界的なヒットになりました。

両者を聴き比べてみましょう。

ボブ・ディラン – 風に吹かれて

ピーター・ポール&マリー – 風に吹かれて(カバー)

ピーター・ポール&マリーのバージョンは、翌年のグラミー賞で「最優秀フォーク・レコーディング」と「最優秀ボーカル・グループ・パフォーマンス」を受賞しています。

この大ヒットによって作者のディランも有名になり、必然的にディランの他の曲もカバー対象として取り上げられるようになりました。

そして、もう一人、巨匠スティービー・ワンダーも「風に吹かれて」をカバーし、ビルボード誌で9位のヒットとなっています。

ロッカバラードのリズムで、まるでゴスペルのように歌い上げています。

スティービー・ワンダー – 風に吹かれて(カバー)

ディランのメロディーの特徴……実は、とても骨太なメロディーで、とても美しい旋律を持っているのです。だから、どんなアレンジや歌い方、リズムにも、余裕で対応できるメロディーであると言えます。

しかし、しわがれ声でぶっきらぼうに歌っている(ように聞こえる)ので、歌唱の個性の方に耳が行きがちです。そのため、あまりメロディアスな楽曲に聞こえてこないのです。

でも、こうやって一度(ひとたび)、カバーアレンジやカバーアーティストがピッタリはまると……元歌から恐ろしい程のパワーが飛び出してきます。

 

ザ・バーズがファーストシングルでカバーした「ミスター・タンブリン・マン」

ミスター・タンブリン・マンは、新しい音楽的なムーブメントを起こした名曲として知られています。後世にも語り継がれるであろう傑作です。

1964年、ビートルズがアメリカ・デビューを飾り、空前の盛り上がりを見せたその年、ニューポート・フォーク・フェスティバルに出場したディラン。その時のギター一本での弾き語り映像をご覧ください。

まさに、フォークの貴公子! これぞ、フォークソングという雰囲気がありますね。

ボブ・ディラン – ミスター・タンブリン・マン

翌65年に、ザ・バーズというアメリカのロックバンドが、同曲をファーストシングルでカバーしリリース。アメリカ、イギリスで1位を記録し、フォーキーな楽曲をロックアレンジで演奏するという「フォークロック」ブームの火付け役となったのです。

※フォーク + ロック = フォークロック

ザ・バーズのバージョンは、イントロの12弦エレキのサウンドが何とも印象的です。ロック編成で、8ビートを効かせたサウンドなのですが、フォークを感じさせる爽やかなハーモニーが印象的です。

ザ・バーズ – ミスター・タンブリン・マン(カバー)

This is FolkRock!

世界の人々は、このバーズのサウンドをフォークロックと認識したのです。もちろん、バーズだけでなく、アニマルズの「朝日のあたる家」などフォークロック系の楽曲が、その時代に集中してヒットしました。

結果として、ボブ・ディランのカバーから、新しい音楽ジャンルが誕生し、これまたディランの楽曲の素晴らしさの証明となりました。

同65年、ディランは再びニューポート・フォーク・フェスティバルに出場しましたが、その際、エレキギターを演奏し、フォークファンから徹底的なブーイングを受けました。

ディラン自身も、フォークのアーティストからロックやフォークロックへ舵を切ったのです。ファンにしてみれば、「フォークの貴公子の裏切り」としか感じられなかったのでしょう。

でも、その後のディランの活躍や世の中の音楽がロックに向って走り出すのを感じ取ったファンたちは、再度、ディランを理解し、応援したのは当然のことでした。

 

ジミ・ヘンドリックスがカバーした「見張塔からずっと」

ディランのオリジナルでも、もちろん有名な「見張塔からずっと」ですが、これに関しては、ジミ・ヘンドリックスのカバーをお聴きください。

ジミの代表作の一つと言われるほど、このカバーは完成度は高く、オリジナルと言っていいほどの高い音楽性をも感じさせます。

天才ジミ・ヘンドリックス meets 天才ボブ・ディラン!

では、どうぞ!

ジミ・ヘンドリックス – 見張塔からずっと(カバー)

歌詞は『聖書』「イザヤ書」第21章の、見張り塔から馬に乗った二人の男が来るのが見えたとき、堕落したバビロンが崩壊したことを知るという逸話を踏まえており、ディランは二人の男に道化師と泥棒、見張り人に王子達を配して、彼の社会観を象徴する寓話的な内容に仕立てている

(見張塔からずっと – Wikipediaより)

歌詞の鋭さや深さが、ジミのロックセンスとマッチングし、傑作の誕生となったと想います。

実際、ディランは「この曲で自分が受ける収入(印税など)の半分はジミが貰ってもいい」的なコメントをしています。

ディラン自身も、ジミが亡くなってからは、ジミのアレンジに近い演奏でライブを行っています。(ジミは若干27歳で不慮の死を遂げています)

自分の楽曲の良さを(素晴らしいアレンジと演奏で)証明してくれたジミ・ヘンドリックスに対する最大の敬意ですね。

ジミ・ヘンドリックスがカバーした見張塔からずっとは、2000年にイギリスの雑誌「トータル・ギター」が選んだ「これまでで最もすぐれたカヴァー・バージョン」、及びイギリスの新聞「デイリー・テレグラフ」の音楽評論家が2004年に選出した「ベスト・カヴァー・ソングTOP50」では1位となった

(見張塔からずっと – Wikipediaより)

 

映画の挿入曲として発表された「天国への扉」

映画「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(1973年)の挿入曲として発表された作品。この映画には、ディランも俳優として出演しています。

元歌は、アンプラグド・バージョンでお聴きください。

ボブ・ディラン – 天国への扉

カバーは、ギターの神様! エリック・クラプトンです。

エリック・クラプトン – 天国への扉(カバー)

実に、心地よいレゲエのリズムにアレンジされていますね。クラプトンは、「アイ・ショット・ザ・シェリフ」で、1974年、レゲエのリズムを世界に広めた実績があります。

ここでも、ディランの骨太メロディーは懐が深く、どんなリズムも受け入れることが、証明されています。

 

ボブ・ディラン大好き吉田拓郎

日本のボブ・ディランと言えば、吉田拓郎さんです。歌い方、メロディーなど、明らかにディランをリスペクトしていることが分かります。トークでも、ディランの事をよく喋っていました。

そんな吉田拓郎が、「風に吹かれて」をカバーしています。しかも、完全コピーで! ここまで紹介してきたカバーは、ディランの原曲とかけ離れたアレンジの物ばかりでしたが……カバーの基本! 完全コピーも良いものですね。

拓郎さんの照れたような笑顔! 好きで好きでたまらない感が溢れ出ています。

吉田拓郎 – 風に吹かれて(カバー)

 

YouTube の釣り動画

YouTube には、なんちゃって動画・パチモノ動画が溢れかえっています。今回も、ボブ・ディランの動画を探っていましたら、「○○○ Bob Dylan オリジナル」みたいなタイトルで、どう見ても御本人の動画と見せかけながら……偽物というのが、沢山ありました。

そのアーティストに詳しくないと、本物かどうかわかりませんよね? 次の動画は写真は本人ですが、歌は本人ではありません。

ボブ・ディラン – 天国への扉 オリジナル! ではありません…。

コメントも「え? どこにディランがいるの?」とか「くそ~。ディランじゃねぇ」など、罵倒の嵐です。

ちゃんと、アーティストの正式な名前がクレジットされていれば、凄い上手いカバーだと絶賛されたかもしれません。残念…。

しかしこの動画、本日で「視聴回数 1,955,182 回」これはいかがな物でしょうか? まさに、騙された人の数ですね。

再生回数を稼ぐために「釣りタイトル」を付けるのはおすすめできません。

ディラン初心者の方が、真剣に偽物を聴いていたとしたら、ショックですからね!

 

まとめ

ディランのメロディーは「骨太」であることが、カバー曲の素晴らしさで証明されました!

皆さんの書くメロディーは、骨太ですか?

野口 義修

投稿者プロフィール

音楽プロデューサー。
ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。
あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

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野口 義修

音楽プロデューサー。

ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。

あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。

ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

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