EDMの貴公子「Zedd」ゼッドは天才メロディーメーカー

このコラムは約5分で読めます

zedd

このコラムでは、偉大な作曲家を取り上げて、音楽に対する考え方や取り組み方、作曲手法や時代との関わりなどを、たのしく紹介していきます。

今回は、EDM の貴公子 Zedd(ゼッド)をご紹介します。

 

EDMの貴公子「ゼッド」

ゼッド は、ロシア生まれのドイツの DJ、音楽プロデューサー。本名はアントン・ザスラフスキー)です。

世界には EDM を盛り上げるスター級の DJ やサウンド・クリエイターたちが沢山います。その中でも、最もメロディーが美しく、緻密な楽曲を作り続けているのが、今回、ご紹介する ゼッド です。

2011~13年頃までは、日本ではEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)を、いわゆるクラブで踊るための単なるダンスミュージックと理解している人が多かったような気がします。

しかし、2015年頃からJポップやアイドル曲、ロックバンド系にまで、EDM(風の)サウンドが頻繁に使われるようになってきました。今や、全世界的な EDM ブームと言ってもいいでしょう。

 

ゼッドの代表曲 Clarity

ここで、彼の代表曲でもある2013年発表の Clarity(クラリティ)を聴いてみましょう。

全米8位を記録した大ヒット曲で、2014年のグラミー賞で「最優秀ダンス・レコーディング賞」を受賞しています。

ゼッド はこのとき若干23歳です。

ゼッド ft. フォクシーズ – Clarity

イントロの矩形波系シンセのアルペジオ・ループに乗って、実に美しいメロディーが展開されます。1分くらいまでは同じコードの繰り返しの中で、メロディーが少しずつ音域を上げ、それにつれてバックのオブリガートや印象的なカウンター・ラインも盛り上がって行きます。

まだここまではリズムはお預け! 美しさ、優雅さが先行します。

40秒くらいで、アタック音が1発のみ、たっぷりのリバーブと共に ♪ドーン! でも、本格的な盛り上げまであと20秒お待ちください。1分位前後に、スネア・ドラムがクレッシェンドしながら細かい刻みを入れて来ます。シンセリードも上昇のカーブを描きます。

そして、歌詞がタイトルの「クラリティ」を歌った瞬間から、先ほどの ♪ドーン と共に、キックの4つ打が鳴り響くのです。ここから、クラブや野外会場のオーディエンスは一斉に踊り出します。おそらく地響きに似たグルーブで会場中が興奮のるつぼと化すのでしょう!

1分から始まる4つ打のパートを EDM では「ドロップ」と呼んでいます。ドロップでは、先ほどまで裏メロディーに徹していたボイスのフレーズが、グッと前に出てきます。「Eb – Bb – C – Eb – F」という白玉(全音符)のメロディー。これがいい仕事をしていて、超印象的です。

で、ここで気がつくのですが、ボーカルの頭からズッとコードに溶けながら、このフレーズが鳴っていたのです。凄い!

ドロップから、何種類かのシンセ音が絡み合いながら、しかも裏拍を強調しながら、四つ打のキックに同期させてビートをコントロール(コンプレッサーのサイドチェイン)させ……ワイルドでいながらここも繊細に音を組み立てていきます。

ドロップがクレッシェンドしきったところで、♪バンバン がきます。この ♪バンバン は、この曲の聞かせ所の一つです。その直前のシンセがピッチを色っぽくベンドアップ(⤴)しているのも魅力ですね。

この ♪バンバン は、いろんな EDM 曲で聴くことが出来ます。そうです、EDM って良いフレーズや音色は、みんなで共有して使っているのです。

さて、♪バンバン の後の歌メロは、さっきの1分位から聞こえたメロディーと同じです。

1分50秒からは……キックが8分で刻みだしてもう最高潮の盛り上がりです。そして、1分54秒から ♪ブ~~~ン というキッカケの音と共に、リズムが止ります。やはり、そのキッカケ音の所の歌詞も「クラリティ」です。ゼッド先生最高!!!!!

本当に計算し尽くされていますね。ちなみに、「クラリティ」の部分は、左右に4分音符のディレイで飛ばしていますね。

その後、前半のワンコーラス部分と同じような展開で進んで行きますが、3分2秒辺りから大きな変化が加わります。といっても新しいメロディー要素が加わるわけではなく、EDM のファンが、ゼッドファンが皆待ち望んでいた、あの部分に突入するのです。

そうビルドアップです。ビルドアップとは、単純にビルドと呼んだりもしますが、最高の盛り上がりを作るために、何小節もかけて徐々に徐々に盛り上げていく手法を言います。

まず、3分2秒から、スネアが連打をはじめますね。♪タカタカタカ……そして、例のコーラスのメロディーがこれまでで一番大きなボリュームで演奏されます。

そうやって十分に盛り上がったところで、3分17秒 ~ 3分30秒 にかけてシンセやコーラスのロングトーンがピッチを上げていきます。そしてスネアが細かい刻みになってピッチも上がりきって、ボーカルが「クラリティ」を歌うと、サビ=ドロップに戻ります。

ここからは、これまでに出てきたフレーズや仕掛けが絡み合ってガッツリ盛り上がります。

クラブや野外フェスで、大音量・重低音に体を預けて聴くのも最高ですが、こうやってヘッドフォンで細部までキッチリと聴くのも、また、楽しいです! 

ゼッドは天才的なサウンド・クリエイターであると同時に、天才的なメロディーメーカーでもあるのです。

 

2nd アルバムに収録されている Beautiful Now ft. Jon Bellion

2015年に発表されたゼッドの2ndアルバム「True Colors」に収録されている「Beautiful Now」です。

これも凄くよくできた傑作です。ちゃんとゼッドの手法や、らしさをキープしながら、新しいトライもしています。

♪Pan Pan Pan Pan Pan……という心を打つメロディアスなリフレインが魅力です。

先ほどの僕の「クラリティ」の実況中継(笑)の要領で、皆さんもこの楽曲を調べてみてくださいね。

ゼッド – Beautiful Now ft. Jon Bellion

 

作曲だけじゃない!ゼッドの楽器演奏能力

ゼッドは、キューベース(Cubase)という音楽ソフト(DAW = ダウ)を使って曲を作っています。上記2曲を聴いただけで、その打ち込みの能力が卓越していることはすぐに分かります。

非常に繊細で音楽的。デジタルチックになりすぎないアナログチックというか、血の通った音がしています。単純に、すごいなぁと想っていましたが……彼は基礎がしっかりしているのだと分かりました。

ピアニストとしてのゼッドです。

ゼッド – Spectrum (Piano Version)

おおっ! ピアノも上手いですね。

元の音はこっちです。これも半端ないメロディアスな名曲です。

ゼッド – Spectrum

そして、ドラマーとしてのゼッド。ドラム上手過ぎですね。

ゼッド – Find You ドラム

ゼッドは両親がともに音楽家だったため、4歳からピアノを習い、6歳で初めてレコーディング、12歳の時にドラムを始めたそうです。

英才教育を受けてきたんですね。

今回のコラムで、EDM の印象が少し変わったという方も多いのではないでしょうか? また、EDM は癖になるサウンドを持っているのもご理解いただけたと想います。

野口も、EDM やゼッド先生の大ファンですが、まだまだ、新参ですので、こんな名曲があるよ! とか情報をいただけると幸せです。

 

まとめ

ゼッドはデジタル、アナログに精通した次世代の若きスーパープロデューサーです。彼の繊細でワイルドな作品から、さまざまなノウハウを学び取りましょう。

野口 義修

投稿者プロフィール

音楽プロデューサー。
ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。
あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

メンバーシップ

運営者情報

yoshinobu_noguchi_300_300

野口 義修

音楽プロデューサー。

ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。

あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。

ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

詳細プロフィール

feedly

follow us in feedly
ページ上部へ戻る