「米津玄師」は作詞作曲イラスト、一人で何でもこなすシンガーソングライター

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このコラムでは、WooM-Song.Club おすすめの才能溢れるアーティストをご紹介します。今回は、米津玄師(よねづ けんし)さんです。

強く才能の輝きを感じるシンガーソングライター&イラストレーターです。

 

 

「Flowerwall」で感じる米津玄師さんの凄さ

米津さんの音楽の世界、歌詞、メロディーの意外性も含めた美学、変幻自在なサウンド構築、ボーカルの表現力など本当に素晴らしいのです。聴く曲聴く曲、すべてに惹かれます。

加えて、才能豊かなイラストや映像美の能力も際立っています。2016年で、若干25歳。もっとも現代的で、時代と共に生きているアーティストだと感じます。

ここで、米津さんの曲を1曲聴いてみましょう。小栗旬さんが子供たちと演じていた「ニコン D5500」のテレビ CM に起用された「Flowerwall」です。

YouTube 公開後、半年も経たないうちに視聴回数600万回以上。その人気の程が分かりますね。

米津玄師 – Flowerwall

 

Flowerwall の美しいメロディー

「Flowerwall」は非常にメロディーが美しいです。Aメロディーのコード進行は、下譜のようになっています。

Flowerwall_chord

Am7からベース音が2度ずつ下がっていく進行は、わりとよく聞く進行ですね。順次進行を上手く活かした覚えやすくも印象的なメロディーです。

ドキッとしたのは、下段の D7の進行です。その前の G から D7……(歌詞でいうと「君と過ごす時間は」の部分)……ここで部分転調しているように聞こえます。メロディーにもファ#が使われて、「ハ長調からト長調への部分転調」なのです。

初めてこの曲を聴いたとき、この部分の新鮮さや意外性にセンスを感じて、お! このアーティストさんやるなぁ! と想いました。その後も聞かせ所満載のメロディー構成で、何度も聴いてしまいました。

 

Flowerwall の歌詞

Flowerwall は、歌詞も印象的です。

歌詞を少々引用します。クリップの3分15秒からの部分です。

誰も知らない 見たことのないものならば 今僕らで名前をつけよう
ここが地獄か天国か 決めるのは そう二人が選んだ道次第

フラワーウォール 目の前に色とりどりの花でできた
壁が今 立ちふさがる
僕らを拒むのか 何かから守るためなのか
解らずに 立ち竦んでる

それでも嬉しいのさ 君と道に迷えることが
沢山を 分け合えるのが
フラワーウォール 僕らは今二人で生きていくことを
やめられず 笑いあうんだ

それを僕らは 運命と呼びながら
いつまでも 手をつないでいた

聴く者に勇気を与えるフレーズが並んでいますね。

「♪見たことのないものならば 今僕らで名前をつけよう」

この歌詞は、得体の知れないものに怯えなくてもいいんだよ。というメッセージに聞こえてきます。名前を付ける = 自分たちの意思でコントロールという意味ですよね。

また、フラワーウォールは、花プラス壁。花は喜びや美しさ、壁は行く手を阻むもの。相反するものに見えるこの二つの組み合わせこそ、「人生」あるいは「運命」そのものだと感じます。

もうひとつ、相反するフレーズがありますね。

「♪それでも嬉しいのさ 君と道に迷えることが」

の部分です。道に迷うというネガティブな発想も喜べる! それが愛するということだ! とメッセージしています。

どの歌詞を見ても深いです。

 

代表曲の一つ「アイネクライネ」

動画がアップされてほぼ2年(2014年春~2016年春)で1900万回以上視聴されている人気楽曲です。「東京メトロ」2014年度CMソングにも採用されています。

やはり、詞曲イラストなどすべてを米津さん一人でこなしています。

米津玄師 – アイネクライネ

メロディーは、「Flowerwall」と同じく、Aメロディーでは順次進行のメロディーが印象的です。

となりの音、となりの音と2度ずつ進む「順次進行」は旋律の起伏が少ないので、歌詞をじっくり聞かせるにはピッタリのメロディーなのです。尖った激しいメロディーでは、歌詞が沈んでしまいがちです。

また、サビに盛り上がりを持ってくるためにも、Aメロディーでの穏やかな順次進行は必然と言えます。

さて、Bメロディーの「♪あなたにあたしの思いが全部伝わってほしいのに」は、一転、「跳躍進行」のメロディーです。特に、コードの構成音を飛び石のように渡っていく、アルペジオ型のメロディーとなっています。メロディーに軽やかな変化を付ける役割ですね。

跳躍・順次・同音を組み合わせて美しいメロディーを作る

そして、サビ前(動画1分12秒から)、ハードなギターのカッティングが2小節間鳴り響きます。歌詞のメッセージそしてメロディーが一番盛り上がるサビを期待させ、胸の高鳴りをブーストする仕掛けです。

ギターは「これから凄いサビがくるぜ!」とばかりに唸るのです。

ここでも、米津さんの繊細さが光ります。ギターの最後1拍音を消して(ブレイクして)、サビのメロディーの入り口に聞き手を惹き付けます。バックの音が突然無くなるので、必然、聞き手は一瞬驚き、米津さんの声に集中できる仕組みです。

順次から跳躍と進んできたメロディーですが、サビでは、なんと「♪ドレミファソ」という長音階そのままのメロディーから始まります。これは世界中の誰でも知っている音階ですから強烈な印象です。

※米津さんは、半音上で歌っているので、実際はすべて#が付きます。

そしてサビの最後、「♪(あたしの名前を)呼んでくれた」という一番のメッセージは、サビ直前と同じくバックが無音になります(1分42秒)。無音こそ最大の盛り上げになるというアレンジですね。

本当に、考え抜かれた名曲であると想います。

米津さんはインタビューで、

自分は良い曲しか作りたくないと思っています。曲を作ってそれを発表するのであれば、100%自分が納得いく形で、日本で一番、世界で一番、美しいものを作るっていう気概のもとでやっている

と答えています。

まさに、その思いの結実がこのメロディーに集約されていますね。

 

「アイネクライネ」歌詞での遊び心

「アイネクライネ」は、皆さんご承知のモーツァルトの傑作「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」から来ていますよね。

1番の歌詞で、「♪今痛いくらい」とありますが、ここを聞くと、

♪IMAITAIKURAI

となって、何となく「アイネクライネ」が聞こえてくるのです。偶然でしょうか? 米津さんは母音の響きを意識してこの部分の歌詞を書き、歌った……と僕は想います。

さて、「Flowerwall」でも、歌詞の相反する意味のコンビネーションの説明をしましたが、この「アイネクライネ」でも、言葉の対比を上手く使っています。

Aメロディーでは、「嬉しいのに」VS「悲しいんだ」、「幸せな想い出」VS「お別れを育てて」。後半では、「産まれてきた」VS「消えてしまいたい」……などなど。

パラドックスという言葉がありますよね。時間旅行におけるタイム・パラドックス。

歌詞でも、「相反する概念を並べながら、結局は同じことを結論する」というテクニックがありますが、米津さんの作詞技法にも当てはまるような気がするのです。

人を愛すること、生きることの意味など、考えれば考えるほど結論から遠ざかり、遠ざかるほど、答えに近づく。

そんなパラドックスがこの歌詞の正体なのでは?

などと考えると、「アイネクライネ」はモーツァルトとは全然関係なくて、「アイ、クライ、」だったりして……と思えてきます。

私、泣き叫びながら産まれてきたんだよ! って「I CRY」。すると、さっきの、♪IMAITAIKURAI が大きなヒントとして成立しますからね。

米津さんの恐ろしいほどの楽曲に対する集中や、真摯な態度を考えると、そんな考えもありかな? って思います。

 

イラストや映像のセンス

今度は、イラストや映像のセンスが溢れる「ゴーゴー幽霊船」の MV を見てみましょう。

米津玄師 – ゴーゴー幽霊船

直筆のイラストに味がありすぎ。飛び出す吹き出しに歌詞が書かれているのも Good。

この曲のメロディーの世界から、昭和の頃の歌謡曲や(リズムやテンポ感は違いますが)美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」なんかにも通じる色合いを感じます。

同じように、イラストのタッチからも、サブカルチャー系昭和漫画誌の金字塔「ガロ」などにも通じる雰囲気を感じます。

米津さんは、1991年(平成3年)生まれですから、昭和など大昔の話かもしれませんが、きっと、昭和という時代にもアーティストとしてのシンパシー(共感)を感じているのかもしれませんね。

ちなみにガロには、『ねじ式』の「つげ義春」さん、『漫画家残酷物語』の「永島慎二」さん、『地獄に堕ちた教師ども』の「蛭子能収」さん、『少女椿』の丸尾末広さんなど、素晴らしい天才たちが集まっていました。

もし、米津さんが昭和に生きていたなら当然のようにガロに投稿していたのではないか? と夢想する僕でした。

・昭和漫画の最高傑作 つげ義春さんの「ネジ式」

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2016年、イラストレーターとしての米津さんは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 15周年企画「コラボグッズ」に参加が決定しました。

音楽での活躍も素晴らしいですが、アート界でもその才能に注目が集まっているのですね。

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米津さんは、ニコ動などで、初音ミクのボカロP(PN: ハチ)としてネット界にデビューし、実際に自分で歌い出し、Youtube などでも爆発的な人気を得て、CD デビュー。

しかも、アートワークやイラスト、動画制作なども一人でこなす天才アーティスト。もっとも現代的なクリエーターの一人であることは間違いないです。

米津さんは平成時代のアーティストとして、クリエイティブな生き方や、作品の数々をフォロワーたちに示し続けているのです。

ここでのフォロワーは、SNS などのそれではなく、彼を目指し、次世代の米津となるべく今現在、創作に励んでいる若者、米津さんの後を追うものたちという意味です。

彼は2016年で、25歳! まだまだ先は長いですが、僕は応援を惜しみません! 1ファンとして応援し続けたいです。

 

まとめ

米津さん、すばらしいアートをありがとうございます! 

「MAD HEAD LOVE」の MV(58秒)で、「♪さらば」の映像が、サラダになっていて、その直後には、皿にのった白馬 = 皿馬(さらば)が登場するセンスには、脱帽しました!

米津玄師 – MAD HEAD LOVE

野口 義修

投稿者プロフィール

音楽プロデューサー。
ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。
あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

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野口 義修

音楽プロデューサー。

ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。

あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。

ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

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