和訳で読み解くビートルズ「Let It Be」歌詞の意味

このコラムは約10分で読めます

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このコラムでは、ビートルズの中でも最も人気が高い「Let It Be」を和訳し、歌詞の本当の意味や、ポール・マッカートニーがこの曲に込めた想いなどをご紹介いたします。

作詞家を目指す人にも、英語を学びたい人にも、ビートルズファンにも……役立つ情報満載でお送りします。

「Let It Be 」は、ポール・マッカートニーの心の叫び、母へのレクイエム

WooM(ウーム)!!!!!

 

ビートルズと「Let It Be」の関係

このサイトでは今後、ビートルズ全曲を作詞・作曲というポイントで解説予定ですが、「レット・イット・ビー(let it be)」の訳詞、和訳などを詳しく知りたいという声が多かったので先行して取り上げることにしました。

ここでは、ビートルズの当時の状況や、作詞・作曲を担当したポール・マッカートニーの心情などを踏まえて、「レット・イット・ビー(let it be)」の本当の意味をご紹介したいと想います。

「レット・イット・ビー(let it be)」は、ビートルズの解散(1970年)と同時期に発表されました。曲を歌っているポール・マッカートニーの表情が、どことなく暗く、悲しげに見えるのも、ビートルズ解散というキーワードが大きく響いているのです。歌詞の中にも、そんな解散をイメージさせるフレーズが入っています。

また、曲を通して、教会チックな、まるでゴスペルソングのような響き(サウンド)となっています。それは歌詞にも現れていて、“Mother Mary(マザーマリー)” という言葉が登場します。一般的には “聖母マリア様” と訳されますね。

また、この曲のレコーディング(1969年頃)は、ビートルズのレコーディングをリハーサルからすべて見せようという幻のテレビ番組の企画「ゲットバック」収録中に行われました。この映像は後に編集されて「Let it be」 という映画になりました。また、同名のアルバムも発売されました。

「ゲットバック」は、「戻ろう」という言葉の意味通り、デビュー当時の自分たちに戻って、シンプルに4人だけで演奏しようというコンセプトの番組企画でした。

しかし、その当時のビートルズメンバーの心は、すでにバラバラになっていて、収録された映像や音源も、暗く沈んだ雰囲気に支配されていました。

……詳しくは、後述しますので、まずは動画をご覧下さい。最初は、音と英語詞のみでレット・イット・ビーを味わってください。

ザ・ビートルズ – Let It Be 曲&歌詞

次に、レコーディング現場の映像です。

ザ・ビートルズ – Let It Be レコーディング映像

 

「Let It Be」歌詞の和訳

・レット・イット・ビー 作詞作曲:レノン・マッカートニー

1番

When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom,
let it be

And in my hour of darkness
She is standing right in front of me
Speaking words of wisdom,
let it be

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom,
let it be

僕が苦しい(苦境にたった)とき
マリア様<(*)別の解釈もあり>が現れて
知恵(叡智)の言葉をくれるんだ
なすがままに(そのままで良いんだよ)

暗闇に包まれた時(闇の中に佇めば)
彼女は僕のすぐ目の前にいて
叡智の言葉をくれる
なすがままに

なすがままに
なすがままに すればいい
叡智の言葉をささやくのさ
なすがままに

2番

And when the broken hearted people
Living in the world agree
There will be an answer,
let it be

For though they may be parted
There is still a chance that they will see
There will be an answer,
let it be

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Yeah there will be an answer,
let it be

Let it be, let it be
Let it be, let it be
Whisper words of wisdom,
let it be

Let it be, let it be
Ah let it be, yeah let it be
Whisper words of wisdom,
let it be

世界中にいる 傷ついた(傷心の)人々が
みんな 心を一つにすれば
答えはすぐそこに見えるでしょう
なすがままに

彼らは離ればなれになってしまうかもしれない
でもまた会えるチャンスだってまだ残っている
答えはそこにあるのさ
なすがままに

なすがままにしなさい
なすがままでいいよ
答えはきっとそこにあるでしょう
なすがままに

なすがままにゆこう
そのままでいい
知恵の言葉をささやきなさい
なすがままに

なすがままに
なすがままにゆこう
叡智の言葉をささやきなさい
なすがままに

3番

And when the night is cloudy
There is still a light that shines on me
Shine on until tomorrow,
let it be

I wake up to the sound of music
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom,
let it be

Yeah let it be, let it be
Let it be, yeah let it be
Oh there will be an answer,
let it be

Let it be, let it be
Let it be, yeah let it be
Oh there will be an answer,
let it be

Let it be, let it be
Ah let it be, yeah let it be
Whisper words of wisdom,
let it be

暗闇に包まれる夜(暗黒の夜)でも
僕を照らしてくれる一筋の光りがある
明日まで輝き続けておくれ
なすがままに

音楽の響きに目覚めると
マリア様が現れて
叡智の言葉を話してくれる
なすがままに

なすがままに
なすがままにしなさい
答えはきっとそこにあるでしょう
なすがままに

なすがままにゆこう
なすがままでいいよ
答えはきっとそこにあるでしょう
なすがままに

なすがままに
なすがままにゆこう
叡智の言葉をささやきなさい
なすがままに

(*)聖母マリア様は、「メアリー母さん」という解釈もある。

叡智 = えいち「すぐれた知識」という意味

いかがでしたか? 暗闇の中、祈りを捧げる男の頭に、雲の切れ間から一筋の光りがさしている……そんな映像が浮かびますね。まるで、教会に飾ってある宗教絵画のような趣ですね。バックに流れる、オルガンの音色(ねいろ)、聖なるコーラスの響きが、いっそう教会色を強く彩っています。

ここで、この曲の作詞作曲のクレジットが、レノン・マッカートニーとなっている件についてお話しましょう。

ビートルズ初心者のみなさんは、「作詞作曲:レノン・マッカートニー」となっていると、作詞がジョン・レノン、作曲がポール・マッカートニー……と考えるかもしれませんが、そうではありません。

ビートルズの楽曲は、ジョン・レノン一人で作った作品もあれば、ポール・マッカートニー単独で作ったものもあれば、二人で部分、部分を手分けした楽曲もあれば……と、バラバラです。

でも、二人の天才は若い頃に、今後どちらが曲を作っても連名「レノン・マッカートニー」で発表しようと男の約束をしているのです。天才同士の信頼の証でしょうね。

レノン・マッカートニー作とクレジットされている「ヘルプ」や「ハード・デイズ・ナイト」は、ほとんどジョン・レノンが一人で作詞作曲のすべてを担当していますし、この「レット・イット・ビー」や「イエスタデイ」はポール一人で創り上げているのです。

 

「Let It Be」は聖書の言葉

この歌詞には、「Let It Be」というフレーズが、40回ほど繰り返されます。それでも飽きのこない魔法の言葉ですね。

実は、このフレーズは聖書の言葉だそうです。

ルカの福音書に……

And Mary said, “Behold, I am the servant of the Lord; let it be to me according to your word.”

……という言葉があるそうです。

「そして マリアは言った。 私は主(しゅ)の下部(しもべ)でございます。 私の身は、主の言葉のままに

……といった意味だと想います。

ポールは、キリスト教の信者ですから、ルカの福音書が頭にあったと考えるのは自然ですね。

レット・イット・ビーは、日本語では、上記の和訳文のように「あるがままに」や「なすがままに」と訳されますよね。

でも、キリスト教的な観点で考えると、つまり欧米人的な解釈では……

「今は、ただ神のお言葉のままに」

……という理解なのかもしれませんね。

孤独の縁(ふち)で、暗闇の真ん中で、悩み苦しんだら……神の言葉を想い出し、お祈りし、その言葉のまま……信じていけば、きっと大丈夫! という理解です。

それこそ、words of wisdom(叡智の言葉、知恵の言葉)ですね。つまり、神の言葉ということですね。

もちろん、日本人の一般的な「レット・イット・ビー」の解釈のように、”いま”を肯定的に受け入れて、耐えながら待てば、きっと良いことがある……という「なすがままに」「あるがままに」の精神、そういった古き先輩たちの言葉(=金言、格言)を信じるという方向もなんら間違っていません。

 

和訳すると見えてくる「Let It Be」歌詞の奥深さ

翻訳・和訳は、野口が出来るだけ丁寧におこないました。和訳で赤文字にしてある3箇所が非常に重要なポイントです。

  1. マリア様(Mother Mary)
  2. 彼らは離ればなれ
  3. 音楽の響きに目覚めると

それでは、順番にご説明していきます。

 

重要ポイント① マリア様(Mother Mary)

マリア様(Mother Mary)ですが、実は、ポール・マッカートニーの実母が、アリー(Mary)・マッカートニー」という名で、ポールが14歳の時に、乳がんで亡くなっています。その喪失感は、非常に大きかったのです。

※同じように母親を早くなくしたジョン・レノン。ポールとジョンは、この部分でも心が繋がっていました。

Mother Mary は、そのまま読めば、メアリー母さんとなります(Mary には、メリー・マリア・メアリーなどの読み方があります)。ポールは、「レット・イット・ビーは、母親が夢枕に立ったときに、生まれた曲」とか「Mother Mary は、母親のことさ」と語っています。

ポールが、悩み抜いて眠った夜……夢の中に、ポールのお母さんが現れて……

“It will be all right, just let it be.”

『大丈夫、うまくいくわよ、ただあるがままにしなさい』

……と語りかけたそうです。

一方、「Let It Be」のサウンドが、賛美歌やゴスペル風なのを考えれば、聖母マリアという解釈が成り立つのも、至極当然です。

こういった、一つの言葉が二つの意味を持つのを、ダブルミーニングと言います。

タイトルにも書きましたが、「レット・イット・ビー」は、ポール・マッカートニーの心の叫び、母へのレクイエム! …… と解釈して間違いないと想います。

 

重要ポイント② 彼らは離ればなれ……

さて、ここまで読んでくれば、「彼ら」が誰をさし、「離ればなれ」がどういった状況を意味するかも、お分かりですね。

(彼らは)離ればなれになってしまうかもしれない、でも、また会えるチャンスだってまだ残っている

そう、彼ら = 自分たちビートルズのことで、離ればなれは、ビートルズ解散を意味します。

でも……ポール・マッカートニーは、万一解散したとしても、必ずやり直せるさ! と強くメッセージしています。その為には、今の状況を堪え忍んで、そのまま、なすがままで進もうと歌っているのです。

 

重要ポイント③ 音楽の響きに目覚めると……

ポール・マッカートニーの代表作「イエスタデイ」は、この「レット・イット・ビー」と並び称されるポールの傑作であり、誰でも知っている名曲ですね。

そして、多くの人が「イエスタデイ」は、ポールが夢の中で聴いたメロディーを元にして作った奇跡の曲であることも知っています。

ポールは、イエスタデイのメロディーが夢の中で鳴り響いている、まさにその時、ベッドから転がり落ちて目が覚めたそうです。

すると、「レット・イット・ビー」の歌詞「音楽の響きに目覚めると……」は、どうも「イエスタデイ」のことと関連しているのではないか? と感じますよね。

野口は想います! 間違いなく、どこかで「レット・イット・ビー」と「イエスタデイ」はつながっています。

 

もう一度「Let It Be」を聴こう

さて、作詞作曲のポールの心情を中心に「Let It Be」の歌詞を解説してきましたが、少し、暗いイメージが皆さんに届いてしまったかもしれませんね。

ここで、「Let It Be」をレコーディング中の彼らの雰囲気が伝わる短い動画を2つご紹介いたします。

Let It Be Naked Trailer

やはり、音楽が大好きで世界の音楽の歴史革命を行ってきた彼らビートルズです。真剣な中にも、ユーモアを感じる表情もあり、真剣に音楽に対峙する空気も感じられますね。

でも、全員、忍び寄る解散のシグナルを感じているようにも想います。

The Making of Let It Be

この動画では、「ゲットバック」のレコーディング・セッションの最後に行われた、あの有名なアップルビルの屋上ライブの映像も観られましたね。

そう、「Let It Be」は、屋上ライブ(1969年1月30日)の頃の作品だったのです。

 

歌詞を書こう!

夢から歌詞が生まれることもあります。今の自分を真剣に考えていると、それが、夢となって現れることもあるでしょう。

いろいろな人が、さまざまな「Let It Be」の訳詞や和訳、意訳、翻訳を行っています。さまざまな解釈があります。

今回の、ウームソング・ドット・クラブの和訳は、ビートルズやポール・マッカートニーの当時の状況・心情を汲みとって、とても丁寧に訳しました。きっと、その歌詞の奥深さを十分に感じていただけたと想います。

ご感想など、下のコメント欄でお聞かせくださいね。 どうぞ、よろしくお願いいたします。皆さんも今の自分を見つめた真剣な歌詞を……歌詞を書きましょう!

 

まとめ

「Let It Be」が、名曲ばかりのビートルズ作品の中でも、非常に人気の曲である意味が、少し分かった気がします。ここまで考えて、やっと「Let It Be」奥深い世界の入り口に立てたような…。

「Let It Be」シングルを発表した1970年……ビートルズは、本当に解散してしまいます。

きっとまた出会えるさ! と語っていたのに、ジョン・レノンは1980年に凶弾に倒れて、二度と全員が出会うことが出来なくなってしまいました。

今日は、DVD で 久々に「Let It Be」を観ようかと思います。

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野口 義修

投稿者プロフィール

音楽プロデューサー。
ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。
あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

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コメント

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  • コメント (2)

    • ノエルかえる
    • 2017年 1月 01日

    訳して見ました 

    いつの間にか、気が付くと、僕は、揉め事の中。
    そんな時、死んだマリー母さんが来るんだ。 
    母さんは、賢者の言葉の片句を繰り返している。 
    「我に成れかし」 

    それで、時も忘れて、僕は、真っ暗の中。
    そんな時、母さんは僕のすぐ側に立っている。
    母さんは、賢者の言葉の片句を繰り返している。 
    「我に成れかし」 

    「我に成れかし」「この身に成りますように」 
    母さんは、賢者の言葉の片句を繰り返している。 
    「我に成れかし」 

    身近な人を亡くして悲嘆にくれている人たちは、
    それでも、この世に折り合いを付けている。 
    でも、亡くなった人からの返事があることもあるんだ。 
    「我に成れかし」 

    生きている人もいずれは死ぬ。とは言っても、
    生きている間にも、亡くなった人に会うことがあるんだ。 
    亡くなった人から返事があることがあるんだ。
    「我に成れかし」 

    夜の間、それも曇って星明かりもない、 
    そんな時でも、一条の光が差して来る。 
    夜明けまで照らしてくれるんだ。 
    「我に成れかし」 

    そんな時、僕は目覚める、耳の中に音楽。 
    そう、死んだマリー母さんが来るんだ。 
    母さんは、賢者の言葉の片句を繰り返している。 
    「我に成れかし」 

    • 野口 義修
      • 野口 義修
      • 2017年 1月 01日

      気品を感じる 訳詞ですね! ポール・マッカートニーの母を亡くした喪失感が良く表れています。
      ポールは こういう意味の歌詞の中に ビートルズ解散の悲しみをダブルミーニングとして表現しているのですね。

      絶妙な 和訳をありがとうございました。

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野口 義修

音楽プロデューサー。

ベストセラーの『作曲本』(シンコー刊)や『楽しく学べる作詞作曲』(ナツメ社)の著者。

あみんの「待つわ」、雅夢の「愛はかげろう」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、 伊藤敏博の「さよなら模様」......など多くの才能やヒット曲を世に送り出す。

ヤマハ音楽院、昭和音大で作曲などの講師を歴任。

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